【いつまでも白い羽根】看護学生における個人情報の取り扱いって?
こんにちは!看護師兼ライターの白石弓夏(しらいしゆみか@yumika_shi)です!
みなさん、看護学生が主役のドラマ「いつまでも白い羽根」見てる??
このドラマのとあるシーンが、看護師界隈で話題になっているようだ…。
※以下、ネタバレあり注意。
第3~4話で出てきた患者さんから受け取った手紙にまつわる流れで、
「あれはさすがにあり得ない」
「学生の範疇を超えている」
というTwitter上でのツイートを見かけた。
ただ、私は少しばかり看護学校の実習教員のバイトをやった経験、学生指導のサポートをしていた立場からみると学生の気持ちもわからんでもない…。
そこで、今一度看護学生に必要な個人情報の取り扱いとはどんなものか、私自身も調べて再確認したものをまとめてみた。
案外、忘れかけていること多くて焦った(笑)
学生さんだけでなく、現場の看護師でも個人情報に関してはグレーゾーンな人多いので、どうぞ一緒に確認してほしい。
(あんまり人のこと言えないけどな笑)
- 患者さんから手紙を受け取るシーン(※ネタバレあり)
- 学生が手紙を受け取った際の背景(※ネタバレあり)
- 学生が知っておいてほしい個人情報の取り扱い
- 実は似たような経験は看護学生や看護師では多い
- 看護学生である場合にどのように対応すればよかったのか
患者さんから手紙を受け取るシーン(※ネタバレあり)
ドラマを見ていない人のために簡単に状況を説明すると…
* * *
主人公である看護学生(瑠美)の受け持ち患者(千田さん)が、がんのターミナルで余命わずか。
自分の死を間近に感じている状況で、心残りにある内容を書き綴った手紙を瑠美に渡す。
「孫に渡してほしい。そして、手紙の中に書いてある花房さんという人にその手紙を渡してほしい」
と言い、数日後に急変して亡くなってしまう。
瑠美は学校の友達である千夏や学外の男友達だけで、その孫や花房さんのことを探し出すことに…。
結局、花房さんは他界。
孫は見つかったので、その手紙を最終的に渡すことができた。
しかし、そのことが親族にバレてクレームとなり、瑠美は実習停止となる。
* * *
文だけでみると、
「こんなの実習停止になって当たり前でしょ!」
と思うわけだけど、実はさまざまな状況が周りで起こっていたのだ。
この状況で学生の立場だったらどうするかな??
学生が手紙を受け取った際の背景(※ネタバレあり)
まずは、患者と親族の折り合いがすごく悪かったこと。
いかにも頑固親父って感じの千田さん。
少ない遺産をめぐって、親族が執拗に遺書を書くように迫っているようなシーンもあり。
千田さんが亡くなったあとに親族が訪れた際、瑠美が孫のことを尋ねたが、不機嫌にあしらわれてしまう。
また、「入れ歯はそちらで処分してください」と冷たく、突き放すような態度であったことから、瑠美は手紙を親族に渡そうと考えていたが辞めてしまった…。
他にも千田さんが入院していた病棟の看護師たちも、千田さんの頑固で気難しい雰囲気から、若干疎ましいと思う存在であった。
ドラマでは千田さんが嫌味を言ったり、怒鳴ったりするシーンも多い。
(抗がん剤治療の副作用などで精神的に疲弊していたのもあって)
あと、全体通して気になるのは、
実習中教員の姿がほとんどない…!!
どうやってフォローしてんのってとこ(笑)
そして、最初は嫌っていた瑠美も少しずつ打ち解け、千田さんの生き方が好きだと思うように。
「私がなんとかしなくては…」
「千田さんが亡くなる前、私に託したもの…」
と、学生の身分では最期何もできなかったからこそ、そう強く感じたのかもしれない。
人一倍責任感の強い人なら、一瞬瑠美と同じことを考えてしまうかもしれないと思う。
しかし、患者さんのために!という感情だけで動いてはいけないことを、ドラマを通して忘れないでほしい。
学生が知っておいてほしい個人情報の取り扱い
ここで、看護学生における個人情報の取り扱いについて、思い出してみる。
実習生が患者さんを受け持つ際に、「実習承諾書」などの同意を得ることから始まるわけだけど、その文面には必ず個人情報の取り扱いについても記載されているはず。
プライバシー保護や秘密保持義務、個人情報の取り扱いについても、実習の同意を得るときに一緒に説明をする。
たとえば、一部抜粋すると以下のようなものがある。
・医療・介護関係事業者は、個人情報を取得するに当たって、あらかじめその利用目的を公表しておくか、個人情報を取得した場合、速やかに、その利用目的を、本人に通知し、又は公表しなければならない。
・診療等のための必要な過去の受診歴等については、真に必要な範囲について本人から直接取得するほか、第三者提供について本人の同意を得た者から取得することを原則とする。
・医療従事者は、患者の同意を得ずに、患者以外の者に対して診療情報の提供を行うことは、医療従事者の守秘義務に反し、法律上の規定がある場合を除き認められないことに留意しなければならない。引用:看護学実習における個人情報取り扱いに関するガイドライン作成のために
http://www.janpu.or.jp/wp/wp-content/uploads/2005/05/guideline.pdf
私が今まで説明していたときは、
「看護学生が実習教育として患者さんの情報を得ること、その情報を記録用紙に記載し、看護師や教員から指導をもらうために利用いたします。患者さんの個人が特定されるようなことはしません。」
「もちろん、途中で学生実習を断ることもできますし、断ったからといって不利益になるようなことはありません。」
などと言っていたかな。
しかし、調べてみると学生は秘密保持義務の法的責任はないけれど、プライバシーの権利については学生でも守る義務があるなど、ややこしい部分はある。
それでも、学生を監督・指導する立場である病院や看護師、看護学校にはこうした責任が問われるために、学生であっても個人情報を扱っているという自覚を持ってもらうことが大切なのに変わりはない。
参考: 臨地実習における患者の個人情報の取り扱い
https://www.e-kango.net/safetynet/press/from/pdf/Vol8.pdf
同意書の内容については学校や病院によって違いが出ることもあるようだ。
まずは、自分が通っている学校の実習規定、または実習先の病院の個人情報に関するガイドラインなどを確認しておくことが必要。
メモ帳はノート型で切り外せないようにする、患者実名はメモ帳やレポートに記載しないなど、いろいろと細かな決まりごとがあるはず。
実は似たような経験は看護学生や看護師では多い
今回のドラマや原作の場合のようなことは実際多くはないけれど、何かを頼まれたり、手紙をもらったりすること…学生同士で受け持ち患者さんのことを話することは意外とある。
それは、看護師として働いている人でも同じことだ。
たとえば、実習生同士で、
「うちの患者さん昔〇〇の仕事しててさ~」
「〇〇さん明日退院することになったんだよ~」
などと話している人いないだろうか?
実名をあげたら完全アウトだけど、どこの病院のどこの病棟で実習しているかわかるので、実名を出さなくても患者さん個人を特定される可能性は多いにある。
こうした実習に関係のない話を第三者に話しているということは、看護師でもよく見かける…
実際にSNS絡みの守秘義務違反で裁判になったケースなどもあるので、改めてよく肝に銘じておくべきだ。
(私も今一度見直さねば)
看護学生である場合にどのように対応すればよかったのか
ドラマや原作のこの手紙のやりとりのシーン。
まぁ、どんな理由があろうと実習停止は妥当な判断だと思われる。
じゃあ、結局どうすればよかったの?という話になるが、いろいろ方法はある。
- 学生なので手紙は受け取れないことを説明する
- 手紙のことを報告しなければいけないことを患者に伝える
- 指導者か教員へ報告し、対応を相談する
「学生なのに(看護師なのに)そこまで家族の問題に踏み込む必要はあるのか?」
という意見もあったが…
患者さんが訴えてきたことに対して、ただ線引きしてできないと言うのはどうなんだろうか。
私が指導者だったら、どうにか患者さんの思いを成し遂げられるように周りと相談し、工夫すると思う。
(すべて叶えられるわけではないけれど)
また、後に同じグループ実習をしている遠野さんが、
「患者さんは看護師ではなく、学生である木崎(瑠美)さんを選んだってことじゃないですか!」
と教員に掛け合う場面があるが、個人的にはこちらも気になった。
そう、患者さんがとても大事なことを学生に託したということは、看護師と患者さんの関係性は破綻していたのではないのかと。
現在、看護師として働く私からすると、一概に学生を責めるだけではいられない出来事だよな…と思ったわけで。
学生の個人情報の取り扱いについては、今一度見直す必要があるだろうけど…
看護師も業務に追われて、なんか大事なこと忘れてないか?って問いたい。
個人情報の取り扱いについては詳しくまとまっているものがあるので、こちらを参照してみてください!
- 臨地実習における学生の患者情報取り扱い上の問題およびその指導法
http://www.oita-nhs.ac.jp/journal/PDF/11_1/11_1_1.pdf
- 医 療 ・ 介 護 関 係 事 業 者 に お け る個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12600000-Seisakutoukatsukan/0000144825.pdf
いつまでも白い羽根の原作に関する記事↓
看護学生に関する記事↓