ちいけあ『脳と栄養セミナー&ワークショップ』当日レポート
看護師兼ライターの白石弓夏(しらいしゆみか@yumika_shi)です!
2019年5月12日(日)、看護の日。
私が運営として参加している『ちいけあ』初のプロジェクトとして、脳卒中リハビリテーション看護認定看護師である内橋恵先生をお呼びして、脳と栄養セミナー&ワークショップを開催!
当日のレポートをまとめましたー!
講師を務める内橋先生のプロフィール、サイトはこちら!!!
セミナー&ワークショップ内容
会場は杉並区にあるリハラボさんの施設をお借りしました。
脳と栄養のセミナー名のとおり、さまざまな種類の嚥下食、服薬ゼリー、経口補水液などの試供品もずらり…!
(こちらはスタッフ、参加者でおいしくいただきました笑)
普段、関西などで行われる内橋先生のセミナーでは、参加者は看護師以外にもセラピストや介護士なども参加されることが多いそう。
今回のセミナーでもさまざまな医療介護職種、ならびに関係企業の方々からの参加がありました。
さて、お楽しみのセミナー&ワークショップスタートです!
まずは日本の現状、臨床倫理について内橋先生から概要の説明。
看護師や医師であれば臨床倫理について学校で学びますが、他の職種では習わないそうです…!
しかし、同じく患者さんに関わる職種としては、見過ごすことができないテーマですよね。
臨床倫理について、内橋先生よりわかりやすくお話いただきました。
例えば、「倫理」という言葉の反対はなんだろう…と全体に問いかけ。
合間のワークショップではグループに分かれて、倫理の反対語ってなんだろう?と話し合いをしました。
倫理の反対語は、不倫、道理、外道など…さまざまな意見が出まして、参加者が打ち解けるきっかけにもなりました(笑)
執筆もされている内橋先生らしい、言葉の意味を正確に知るというお話。
また、医療者は自分の価値観で説明してしまいがち、左右されやすいことを知ってほしいとも話していました。
自分に置き換えて考えることと、患者さんの気持ちを考えることは別であるはずなのにごちゃ混ぜになってしまうなど、私も危険だと感じることがあります。
個人的にすごく痛感しました。
次に内橋先生の専門である脳と栄養。
解剖学について、ある程度は医療者として理解する必要はある…と前置きをする内橋先生。
また、なぜこの障害や症状が起きているのか…という根本的な部分を解剖や病態で振り返ることが重要であると、お話してくださいました。
「この人は麻痺だから~」「この人は認知だから~」と大きなくくりにして、決めつけたり、思考停止したらダメですよね…(そういう看護師、たまにいます)
ワークショップでは、半側空間無視や半同名半盲を例にどのように脳が障害されるのか、どのようなケアができるのか、グループで意見を出し合いました。
内橋先生の説明は、看護師やセラピスト以外でもわかるようにかみ砕いた補足もあり、「こんなやり方があるんじゃない!?」と手探りながらも、メンバー全員で話し合うことができました。
実際の現場では忙しさのあまり、しっかりとミーティングをせずに過ぎてしまうこともあります。
この感覚を忘れてはいけない、すごく大事だと思いました。
他にも脳の病態から考える排泄について。
関西出身の内橋先生らしく、テンポ良く話をまわし、ツッコミを入れつつ、現場に沿ったたとえ話が参加者の笑いを誘います。
(まさか内橋先生からう〇ちネタが出てくるとは…笑)
このあたりの話は、すぐに明日からでも使えるノウハウが詰まっていたので、さっそく実践してみた人も多いのではないでしょうか…!?
そして、最後。
内橋先生が、どうしても皆さんに見てもらいたいとお話ししていた動画を公開。
そこには、脳梗塞で左重度麻痺があり、ほとんど腕を動かすことができない男性患者さん。
この患者さんは利き手が使えるので、本来なら左腕のリハビリは積極的に行わず、右腕でカバーするようなことが多いです。
しかし、動画で紹介したケースでは、患者さん本人から「食器を置いて食べるなんて、動物みたいなことはしたくない。左手でお茶碗を持って食事をしたい」という強い意思があったそうです。
そこで、本人の気持ちを尊重し、スタッフ一丸となって左腕のリハビリを10週間重ねます。
最終的には、左腕でお茶碗を持って食事をすることができるようになりました。
ぎこちないながらもコップを両手で洗う姿や嬉しそうに白米を頬張る姿、洋服の前のチャックを左手で行う姿などが映し出されました。
その過程がしるされた動画です。
私も回復リハで少しだけ働いたことがあったので、胸がいっぱいになりました。
ここまで患者さんの声を聞けていたのかと自問自答しながらも、患者さんの生き生きとした表情をみて、自分のことのように喜びを感じました。
看護師はこうした関わりができることが、強くやりがいに繋がると思います。
しかしこの反面、患者さん本人の希望よりも、家族や医療者は「トイレは一人で行けるようになってほしい」「一人で何か出来るようになってほしい」と思うことがあると話す内橋先生。
それでも、この動画で紹介した方にとって、トイレに行けるようになることよりも、自分でお茶碗を持って食事をすることにアイデンティティを感じていたこと。
これを引き出し、達成できるようにスタッフが同じ方向を向くことが大事ですよね。
このケースはチャンピオンケースだそうです。
そして、内橋先生が心に留めている言葉。
The Best‼︎
〜最上をめざして 最善を尽くす〜
医療者は、このチャンピオンケースを出し続けなければいけないと話す内橋先生。
また、本人ではなく医療者が先に諦めさせてはいけないとも、力強くお話されていました。
本人やスタッフがやれるところまで頑張って、それでもダメだったらそこで初めて本人が諦める、そこで受容することができるのではないかと…。
私も知らず知らずのうちに、諦めることをしていたかもしれない…。
日頃、病院などで働いていると業務に追われることが多く、患者さんを置いてけぼりにしてしまうことがあるかもしれません。
しかし、本人の意思を引き出した医療者、本人もリハビリを続けることが出来たこと、チームの全員が患者さんと同じ方向をみて同じ歩幅で進んだ結果を見て、私は改めて看護のあり方を振り返ることができました。
看護師以外の方でも、同じように患者さんに寄り添うこととはどのようなことかと、ヒントをもらったのではないでしょうか。
ご参加いただきました皆様、講師を務めてくださった内橋先生、誠にありがとうございました!
次回は9月頃に皮膚排泄ケアの認定看護師である方のセミナー&ワークショップを開催予定です!